『一生のお願い、聞いてよ。』
そこに立っていたのは、真央だった。
「なに?」
真央『………』
「いや、なに?」
黙ってる真央にイライラした。
お母さん『りょう?どうしたの、早くあがってもらいなさい。どうぞ、あがって』
お母さんのお節介で、真央は頭をペコペコさせながら靴を脱いであがってきた。
とりあえずあたしの部屋に入ると、真央は部屋をキョロキョロ見渡しながら座った。
あたしはイライラしたようにベッドに座り、タバコに火をつけた。
「で、なに」
真央『りょう…』
「だからなに」
真央『ごめん』
「なにが」
真央『怒ってるよね…』
「は?」
真央『あたし、昔から勇治のこと好きどった。りょうと付き合った時は正直ショックもあったけど、りょうと仲良くなれて嬉しかったし、応援したいと思ったのはほんと。』
「で?」
真央『勇治からちょこちょこ相談は乗ってた…りょうが塾に行きだして会えなくて寂しいって…』
「………」
真央『それで、りょうに他に好きな人できたのかなって勝手に勘違いして…』
「………」
真央『りょうの代わりでもいいから、勇治の隣にいたいと思った…りょうと思っていいよって、あたしがしつこく勇治に言ったの。いつかあたしのことを、好きになってくれたらって思ってた…』
「………」
真央『でも、勇治はあたしのこと好きになんてならなかった』
「え?」
真央『一緒にいるときも、いつも勇治はあたしや名前を呼ぶとき必ずりょうって最初に間違えて名前を呼ぶの』
「………」
真央『それが辛くて、さっき別れてきた』
「え、別れたの?」
真央『うん…勇治と別れたからとか、そういうのじゃないけど…やっぱりあたしはりょうと友達でいたい…そう思ったら、気付いたらりょうの家に向かって走ってた…』
「………」
真央『りょう、ほんとにごめんなさい』
真央は深々と頭を下げて涙をこぼしながらあたしに謝った。
それを見ると、真央へのイライラは、すーっと消えていった。
「真央、顔あげなよ」
真央は顔をあげようとしなかった。
「真央、もういいよ。あたし勇治に未練ないし、今ちゃんと大好きな彼氏もいるし、気にしなくていいよ。真央が勇治のこと好きなら、あたしは応援するよ」
真央は俯いたまま体を震わせたと思ったら、声をあげて泣き出した。
「真央?!」
真央『りょーーー、ほんとにごめんなさーーーい、ごめんなさーーーい』
涙をぼろぼろと流しながら子供のように泣く真央の隣に行き、背中をさすった。