紫陽花ロマンス


抱っこをした光彩の顔を覗き込む前に、異変に気づいた。


光彩の体が熱い。
息遣いが荒い?


「みいちゃん?」


そっと呼び掛けてみたけど、返事はない。眠ったようにも見える顔は赤く、開いた口から苦しそうに息を吐いている。


ヤバい……


すぐに体温を計った。
39度……熱が上がってる。


どうしよう……
こんな高い熱は初めてだ。


これまでにも熱は出したことはある。保育所で水疱瘡や風邪ををもらってきたけど、こんなに高い熱を出さなかった。


一気に不安が溢れ出す。
もうすぐ、十一時になろうとしている。


光彩のおでこに冷却ジェルシートを貼って、パソコンを起動した。光彩を抱っこしながら夜間応急の病院を検索する。


霞駅のショッピングモールの近くに、最近できた夜間応急診療所があるらしい。しかも、ちゃんと小児科もあるようだから連れて行こう。


急いで着替えた。
お風呂に入って、すっぴんだけど構ってなんかいられない。


バッグを取り上げて、家を飛び出す。


車の後部座席のチャイルドシートに座らせた光彩は、目をつぶったまま荒く息を漏らしている。いつもなら抱っこをねだって、私から離れたがらないのに。


込み上げる不安を抑えながら、車を走らせた。




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