紫陽花ロマンス


次の日の日曜日、出勤前に観た天気予報では降水確率は10%、とても雨は降りそうにない。


両親の旅行中には長い傘を持って出掛けたけど、今日は持たずに出掛けよう。光彩は実家に預けてるし。


きっと降らないだろう。
だけど、絶対に降らないでほしいとは思わない。


降ってもいいかも……
と少しだけ思ったのは事実。


職場の売り場には窓はない。外の様子は見えないから、レジに並ぶお客さんの持ち物を観察した。誰も傘は持っていないようだ。


今日は降らないのかな。
もし降るとしたら、私の帰る頃を狙ってくるはずだ。


夕方にかけて、食品レジは慌ただしさを増していく。そんな中、私は十七時で勤務を終える。あと十五分、頑張ろう。


「いらっしゃいませ、お待たせいたしました」


気合とともに挨拶して、レジ台に置かれたカゴへと視線を落とす。お客さんの顔を見る間なんてない。


カゴの中にはお菓子が五、六個。そのうち二つは、小さい子供向けのお菓子だった。


たったコレだけ?
他のお客さんは、たいてい食材をまとめ買いしてるのに。


しかも忙しい時間に……と思いながら、顔を上げた。どんなお客さんなのか見てみようと。



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