紫陽花ロマンス
いつまで見てるつもりなんだろう。胸がぞわぞわして落ち着かないじゃない。
アイスコーヒーに挿さったストローを無意味に回して、ぶつかり合う氷を目で追った。気持ちが落ち着くかと思ったけど、そうでもない。
「ショッピングモールもあるし便利で住みやすい町ですよね、私も以前は霞駅の近くに住んでいたのでわかります」
少し早口で言ったのは、大月さんを突き放すため。
大月さんはくすっと笑って、椅子の背もたれに体を預けた。
「うん、いい町だよ。そういえば萩野さんの実家は月見ヶ丘だよね? 何丁目? 僕の実家は一丁目なんだけど」
「私は二丁目です。もしかして大月さん、西小学校ですか?」
大月さんの顔色がぱっと明るくなった。私を見つめる目が、さっきよりも輝いている。
「そう、もしかして萩野さんも? 西小から月見中学?」
「はい、そうです。大月さんも? 同級だったんですか?」
「いや、僕は一月生まれだから、学年はひとつ上になると思う。すごい偶然だなあ……びっくりした」
私だって驚いた。
まさか大月さんが、そんな近くにいた人だったなんて。