紫陽花ロマンス


「お……男の人だから、そんな気持ちぐらい持ってて当然だと思う」


ぽろりと口走ってしまった言葉に、一番驚いたのは自分だった。そんな事、言うつもりなんてなかったのに。

すぐに否定しなくては、と顔を上げた。


「やっぱり? 萩野さんもそう思ってた? 男ってみんな、そんな風に思われてるのかなあ」


と大月さんが苦笑いする。
顔が引きつってない?


「ごめんなさい、違うの。そんな意味で言ったんじゃなくて……」


じゃあ、どんな意味だ。
焦れば焦るほど言葉は浮かばず、頭の中が真っ白になっていく。


大月さんは頬杖をついたまま、おろおろする私を優しい顔で見つめてる。


ふと大月さんの口元が緩んだ。
と思ったら、堪えきれない様子で笑い出す。


「わかってるよ、全然気にしてないから。僕こそごめん、萩野さんがかわいいから、ちょっと見てたんだ」


なんてことを言うの……


さらに熱を持つ頬を抱えて、私は俯いた。もう、二度と顔を上げられないかもしれない。


「やっぱり、笑ってる方がいいよ」


大月さんの声が近づいてくる。
テーブルに映った影は、私の顔を覗き込もうとしている大月さん。


これ以上、私を見ないで。







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