紫陽花ロマンス
聞いてしまった後悔と、大月さんに対する申し訳なさに胸が締め付けられる。
やがて、ひとつの言葉が浮かんだ。
「僕たち、きっと似ているね」
それを、先に口に出したのは大月さん。
「うん、似てるのかな……」
私も口に出してみた。
胸の疼きが治まっていくような気がする。
大月さんに離婚した理由を話した覚えはないし、大月さんが彼女と別れた理由なんて知らない。
何の根拠はないけど、私たちは確かに似ていると感じた。
フードコートを見たら、席に着いて向かい合う二人の姿。テーブルの上にはアイスクリームのカップが二つ。
肩越しの髪を揺らして彼女が笑う。目深にキャップを被った彼が、彼女の頬へと手を伸ばす。テーブルに身を乗り出した彼が、首を傾げながら彼女へと顔を近づけてく。
おいおい、こんなところで……
見ているのが恥ずかしくなって、目を逸らした。
その瞬間、テーブルに置いた私の手に大月さんの手が重なる。
とくんと胸の音が響いた。
「彼女が、アイツを選んだんだよ」
大月さんが小さく息を吐いた。
ケリはついたと言いながらも、本当はまだ諦めきれていないのかもしれない。
それは私も同じかも。