紫陽花ロマンス
「よし、決めた」
大月さんが目を開けた。
にこりと笑ってるけど、何かを企んでそうな顔。
ずっと手を包み込んだまま。
でも、悪い気分はしない。
むしろ……気持ちが落ち着いてくのがわかる。
「今度の休み、いつ?」
いきなりな質問が舞い降りた。
どうして休みを聞くの?
と思いながらも、僅かな予感が胸で燻っている。
「水曜日、だけど?」
「出かけよう、光彩ちゃんも一緒に」
やっぱり!
って、そうじゃない!
出かけるって、どういうこと?
「え? ダメダメ、光彩は病み上がりだし保育所が……」
「光彩ちゃん、病気してたの?」
大月さんの顔は明らかに残念そう。
「うん、溶連菌感染症っていう病気……もう熱は下がったから保育所につれて行っても問題ないけど、明日、月曜日まで休ませようと思ってるの」
「また病院つれて行くの?」
「うん、明日病院に行って、大丈夫って言われたら火曜日から保育所につれて行くつもり」
「そうか……光彩ちゃん次第だね」
腕を組んで考え込む大月さんを見ていたら、申し訳なくなってくるのはなぜだろう。
違うってば、決して私が出かけたい訳じゃない。頭の中が混乱しかかってる。