紫陽花ロマンス
水曜日はいつも通り、光彩を保育所に送って家に帰った後、家事を始めた。
いつもよりハイペースで洗濯物を干して、掃除機を引き連れて部屋中を巡る。
ひと通り終えてソファに座った途端、携帯電話が鳴り出した。
予想通り、大月さんからの着信。
タイミングが良すぎる。
それにしても、用事が終わるの早いなあ……と思いながら電話を取った。
「今終わったよ、まだお昼ご飯食べてないよね?」
「うん、まだ……」
部屋の時計を見たら、十時半を過ぎたばかり。まだお昼ご飯なんて、考えるような時間じゃない。
「一緒にお昼ご飯食べよう、もうすぐ霞駅、電車で迎えに行くから待ってて」
大月さんは言いたいことだけ言って、電話を切ってしまった。
迎えに行くって、私の家まで?
霞駅から電車来るなら、月見ヶ丘駅で待ち合わせてもいいのに……などと思いながらベランダに出た。
梅雨の晴れ間の青い空、からっとした空気が気持ちいい。今から大月さんと会うというのに、雨は降りそうにない。今日の降水確率は10%、傘を持たなくてもいいはず。
三十分も経たないうちに、大月さんはやって来た。インターフォン越しに照れ臭そうに笑ってる。