紫陽花ロマンス


聞いていたとおり、平日なのに店内はお客さんが多い。小さい子供を連れた若いお母さんや大学生ぐらいの若い子たちが目に付く。


私たちは店内案内図を手に、グルメゾーンへと向かった。見かけない飲食店がたくさん並んでいて悩んでしまう。


「何が食べたい?」


と聞かれても、すぐには決められない。ひと通り巡ったけど決められずに唸っていると、


「普段あまり食べないものにしよう、お好み焼きは?」


と大月さんが促す。


「うん、お好み焼きはあまり食べないかも……家で作らないし、実家の父が嫌いだから」

「よし、決まった」


にこっと笑って、意気揚々とお好み焼き店に入っていく。


あまりにも即決だから驚いた。
お腹が空いていたのだろうか。


店内はソースの匂いが充満している。髪や服に臭いがつくかもしれない。光彩のお迎えの時に臭ったら嫌だなあ……と考えていると、大月さんがテーブルにメニューを広げた。


「何にしよう? 大丈夫、匂いは帰る頃には消えてるよ、それより早く頼もう」


と言って、大月さんが目を輝かせてメニューを見てる。なんだか単純というか、面白い。






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