紫陽花ロマンス


いや、本当にそうかもしれない。
こんなにも私の気持ちを揺るがせておいて、何の気もないのかもしれない。


勝手に私が舞い上がってるだけ?


何の気もないのに、誕生日プレゼントなんかくれたりする?


誕生日だからって、晩ご飯に誘ってくれたりする?


仕事中だというのに、ひとりで悶々としていた。


日曜日だから、お客さんは多い。レジに並ぶお客さんは列をなして、てんてこ舞いなんだけど切迫感はない。


レジを通す単調な流れ作業を辛うじてこなしているものの、頭の中では他の事ばかり考えてる。大月さんのことばかり。


かき消そうとするのに、常に頭の中にいて浮かび上がってくる。あの穏やかで優しい笑みを湛えた顔をして。


今朝、実家に光彩を預ける時に私の晩ご飯はいらないと母には言ってある。職場の人と晩ご飯を食べに行くからと。


母は少し不思議そうな顔をしていたけど、疑われてはいないはず。


仕事だというのに、いつもより少し小綺麗な服を着てきたのは気づいていないようだったし。


何も悪いことをしてるわけじゃないから隠さなくてもいいのに、知られるのが恥ずかしい。まだ、そんな仲じゃないのだから絶対に誰にも話せない。







< 133 / 143 >

この作品をシェア

pagetop