紫陽花ロマンス


大月さんが、美味しそうに食べてる。こんなに美味しそうに食べる人を見たのは久しぶり。


見惚れてしまいそうになると、大月さんが話し出す。


もっぱら同じ地元の月見ヶ丘の話題や、小学校から高校までの同級生や先生の話題が中心。


さらには修学旅行は雨だったとか、嫌いなマラソン大会に雨が降ってほしいと願ったのに降らなかったとか。


大月さんは雨に遭わなかったというから、雨女なのは私だけ?


共通の話題があるって楽しい。
あっという間に時間は過ぎていく。


「そろそろ帰ろうか、光彩ちゃんが待ってるね」


大月さんが、腕時計に目を落とした。


こういう時、『やましい気持ち』のある男の人なら、もう少しいいじゃんとか言いそうなのに。


やっぱり、大月さんだ。





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