紫陽花ロマンス
最近、日が長くなった。それだけのことが嬉しい。冬場なら今頃は真っ暗になっている時間だというのに、家に着いてもまだ明るいから得をした気分。
光彩と大きなトートバッグとベビーカーを抱えて、マンションの階段を二階へと上る。こんな時、私ってすごいと感心してしまう。自分で自分を褒めてみたら、結構頑張れるものだ。
マンションにエレベーターはあるのだけど、あまり使いたくない。待つのが面倒だし、同じマンションの住人と一緒になるのが嫌。五階建てのマンション、二階ごときでエレベーターを使うなと言いたげな目で見られることが多いから。なんて、私の被害妄想かもしれないけど。
世の中、まだまだ女子供に優しくないのは事実。身を持って感じてること。
階段を上がりきると、視界に光が飛び込んできた。
黒い雨雲の途切れた隙間から、澄んだオレンジ色の光が溢れている。沈みゆく夕日の最後の演出に、思わず息を呑んだ。
きらきらと輝く光の中から天使でも降りてくるんじゃないかと、ちょっとメルヘンなことを思ってみたりして。
一日の終わりに、こんな素敵な光景を見られたことに感謝。なんだか目頭が熱くなってきて、涙が溢れてしまいそうになる。