紫陽花ロマンス


「ママ」


光彩が眩しそうに目を細めて、私の顔を覗き込む。不思議そうに首を傾げて。


もうすぐ目の前に我が家の玄関の扉が見えているというのに、こんな所で止まってしまったから早く家に入りたいと催促しているのだろう。


「ごめん、みいちゃん。お日さま、とてもキレイだね」


光彩の不安をかき消すように、笑顔で返した。光彩も真似して「きれい」と声に出す。


「上手、きれいって言えたね」


光彩の頬に頬をくっつけた。


ああ、なんて愛おしいんだろう。


柔らかな頬の感触、温もり、そして腕に掛かる重さ、光彩のすべてが愛おしいくて堪らない。


光彩は私が守るべき、かけがえのない存在。


私は決して、ひとりじゃない。
私には光彩がいる。


光彩のために、私は強くなる。
光彩のために、私は頑張れる。


何度も、何度も、胸で呟く。


ぎゅうっと光彩を抱き締めて、顔を上げた。嬉しそうに笑う光彩の顔。


「よし、帰ろう」


力を込めて歩き出す。
我が家へと。






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