紫陽花ロマンス


毎日、少しずつでも光彩の成長を感じることができるのが、私の楽しみ。


時計を気にしながら晩ご飯を済ませて、すぐにお風呂に入る。晩ご飯を食べる前にお風呂の給湯スイッチを入れておくと、ちょうど食べ終わった頃には沸いている。


一応、九時までに光彩を寝かしつけるのが目標。保育所でよくお昼寝をした日は、寝つきが悪いのがちょっとした悩みだけど。


添い寝しながら髪を梳かしたり、頭を撫でたり。根気よく柔らかに、胸をとんとんと叩いてあげる。
決してイライラしてはいけない。


苛立つ気持ちは不思議と伝わってしまい、逆にグズらせて寝つきを悪くしてしまうもの。常に、気持ちは穏やかに保たなければ。


やがて光彩の目が、とろりと蕩け始める。もごもご動いていた口の動きが止まり、すうっと心地よい寝息を立て始めた。


やれやれ、ようやく寝てくれた。
私の母としての役目は終わり。そっと布団から抜け出して、台所兼リビングへ。


寝室の引き戸はいつも開けっ放し。
セミダブルのベッドで眠る光彩の様子を見ながら、これから洗濯と洗い物を片付ける。


1DKの小さなアパートは、どこに居ても目が届く。光彩と二人で住むのには、ちょうどいい広さだ。




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