紫陽花ロマンス
3. 雲と泥


土曜日の朝、目が覚めたらいつもより外が暗い。


なぜ?


と思ってカーテンに手を掛けたら、地響きのような轟音がした。お腹の中にまで響いてくる音は、大嫌いな雷。


渋々カーテンを開けた窓から見える空は真っ黒な雲に覆われ、目の前は大粒の雨が叩きつけるように降り注いで真っ白に染まっている。


「サイアク……」


溜め息が漏れる。


まだ洗濯物は干していなくてよかった。こんな雨なら確実に吹き込んで、濡れてしまうに決まっている。


だけど今日は里穂とお昼ご飯を食べに出かけようっていうのに、この雨はいったい何なの?


視界に飛び込んだ閃光に、慌てて部屋の奥へと逃げ込んだ。轟音にも動じることなく、光彩はまだすやすや眠っている。


時計を見上げたら、まだ七時。
里穂とは十二時に霞駅で待ち合わせだから、まだ時間はある。


お願いだから、それまでには止んでいて……祈りながら出掛ける準備を始めた。



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