紫陽花ロマンス


出掛ける準備が整った頃には雷雨は止み、何事もなかったような青空が見えてきた。


急いで車に乗って実家へと向かう。
光彩は後部座席のチャイルドシートで、ぼんやりと窓の外を眺めている。


実家の駐車場に停めていると、母が家から出てきた。光彩を抱き上げて、空を指差している。


「ほら、見て。虹だよ、キレイだね」


指差した空には半円形は半分ほどで途切れてしまっているけど、はっきりとした色の虹が架かっている。


運転席の窓から空を見上げる私を見て、母はくすっと笑った。


「今朝の雨、凄かったね」

「うん、びっくりしたよ。私が出掛けるのを邪魔されてるのかと思った」

「止んでよかったね、気をつけて行っておいで。ほら、みいちゃん、ママに行ってらっしゃいって」


母は抱っこした光彩の手を振る。


「じゃあ、行ってきます」


私も手を振り返して、光彩が笑っているうちに車を発進させた。





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