紫陽花ロマンス
アパートに車を停めて、月見ヶ丘駅から電車で霞駅に向かった。待ち合わせは霞駅。
早めに着きたくて早く家を出たら、乗るつもりだった電車の二本も前の電車に乗れてしまった。待ち合わせ時間まで、まだ二十分ほどある。
でも待つのは嫌いじゃないからいい。遅れるよりマシだ。
霞駅は大きな駅だから、私と同じように待ち合わせしているらしき人も多い。とりあえず人間観察でもしようと、私は柱の傍に立った。
いろんな人を見ていると、想像から妄想が膨らんできて面白い。
小学生か中学生ぐらいの幼いカップルや親子ほどの年齢差のありそうなカップル、今にも腕を組みそうな若い男性二人にドキッとしてみたり。
やがて改札口の人波が途切れたから、券売機へと目を向けた。
おばあさんがひとり、券売機の上に掲げられた路線図を見上げてぶつぶつ言いながら悩んでいる様子。
両手に提げた荷物はいかにも重そうで、時々よいしょっと掛け声とともに持ち替えながら見上げている。