紫陽花ロマンス


私と離婚した半年後、関口君は彼女と結婚したらしい。昨年のクリスマスイブだと教えてくれたのも里穂だった。


「ふぅん……そうなんだ、誰から聞いたの?」


と訊ねると、里穂が周りを気にする素振りで身を乗り出した。


「彼女の上司。聞かなくてもみんな知ってるよ、つわりが酷いみたいで、頻繁にトイレに篭って吐いてるのが聴こえてくるのよ、気になって上司に聞いたら、今四ヶ月だって教えてくれたの」


ばちが当たったんだ。
他人の者を盗ったりするから、自業自得だ。


「でもね、腹が立つの。彼女、関口君が浮気してないか気になるって友達に話してたの、バカじゃない? って思わない? 自分がしたことを反省してるの? って言ってやりたかったよ」


里穂が声を荒げる。


それを聞いたら、私も腹が立ってきた。
顔では平静を装っているけど、胸の奥底に封印している怒りがぐらぐらと揺らいでる。もう少し刺激を与えたら、溢れ出してくるんじゃないか。


だけど、ここで爆発させても仕方ない。
もう終わったことなんだから。



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