紫陽花ロマンス
意味もなく見つめ合った後、里穂はゆるりと口角を上げた。
「美空、変わったね。大人になったというか、強くなったのかな……それが母の強さなのかな、カッコいいよ」
とても満足げな顔。
さっきまで怒っていたとは思えない穏やかな笑み。
そんな顔で見つめられたら、恥ずかしくなるじゃない。私は何にも……カッコよくない。ただの負け犬。
「全然、カッコよくなんかないよ、くたびれてるし、手もカサカサ、毎日家事と育児に追われてるだけだもん。里穂は本当に綺麗になったよ、本当に羨ましい」
「やめてって、私も美空みたいなお母さんになれるかなあ……先輩として、いろいろ教えてもらわなくちゃ、ね」
「その前に結婚、でしょ? そんなに臆病になるなんて里穂らしくない、ちゃんと前に進まなきゃ、彼まで不安にさせるじゃない」
二人で頬を紅く染めて笑い合う。
やっぱり、笑ってる方がいい。