紫陽花ロマンス
「そうだ、結婚式の日には、私が必ず長い傘を持つから安心してね、絶対に雨降らさないから」
「そう、それは絶対にお願いしなきゃね、いくらカラッと晴れてても長い傘は忘れないでよ」
笑っていると、ようやく料理が運ばれてきた。温かな匂いが満ちて、待ちきれないとお腹が催促し始める。
「美味しい、里穂はいい店知ってるよね」
「うん、実はね、彼が調べて連れてってくれたのよ」
舌鼓を打ちながら、里穂がぽろりとのろける。頬を染めた顔には幸せが溢れていた。
「さすがだね、やっぱりいい彼氏だよ」
羨ましいと思った。
だけど、私はもう結婚も男性もいらない。欲しいとも思わない。
私には光彩がいる。
光彩さえ居てくれればいい。
私は光彩のためだけに、母として強く生きていくんだと決意したんだ。
他には何も望まない。