紫陽花ロマンス
不思議な気分だった。
何だろう、この違和感は。
胸がぞわぞわしてるけど、恋とかではない。そんな感情じゃなくて、ただ何かが違うという漠然とした気持ち。
本当にあの人は、バッグが地面に落ちる前に受け止めたのだろうか。
わざわざ自転車から下りて?
落ちたバッグを拾ってくれるならわかるけど、落ちてくるバッグを受け止めたりするなんて考えられない。ましてや他人のバッグなのに。
変な人……
そうか、変な人なんだ。
傘を壊したあの人と同じ。
気づいたら、涙が止まっていた。
見上げた空はどこまでも青く、雨は降りそうにもない。
おかしいな……
傘は持ってないのに。
そうだ、早く戻らないと休憩時間が終わってしまう。
私は急いで自転車を走らせた。