紫陽花ロマンス
「え? お子さんいるの?」
目が合った彼は、明らかに驚いてる様子。もしかして、若く見られたのなら少し嬉しいかも。
「え、はい……」
「そうなんだ、いくつ?」
「一歳の娘です」
「あ、君は?」
彼が焦ったように聞き返す。
もしかして、私の年齢?
娘だと思ったのに、恥ずかしい。
「二十七、もうすぐ二十八です」
「あ、じゃあ僕と同じ? いや、僕は早行きだから一つ下かな? だったら、敬語で話すのやめよう。今日は、お子さんはどうしてるの?」
俯いた私に呼び掛ける声は温かい。まるで気にするなと言ってくれているようで。
「今日は実家に預けてます。普段は保育所だけど、土日は両親が預かってくれるので」
「保育所に預けて働くの大変じゃない? いや、三歳までは保育所に預けないで、付きっきりで育てるっていう人が多いとか聞いたことがあるから……」
「そうですね……私は家で子供と二人きりで引きこもってるよりも、外に出る方が好きだから……だったら、仕事辞めなきゃよかったのにって思うでしょ?」
また……
どうして私は、余計な事を話してしまうのだろう。