紫陽花ロマンス


あと十分ほどで十八時、予定通り実家に到着。


実家の駐車場には、あるはずのない弟の車が停まっている。


おかしい。
確か今日は彼女とデートと聞いていたのに、帰りが早過ぎる。


三歳下の弟、充(みつる)も私と同じようにサービス業勤務だから、基本的に土日は出勤だ。彼女はT重工の協力会社に勤務しているらしく、土日祝が休みだと聞いている。


今日は土曜日、彼女と丸一日デートできる貴重な日に晩ご飯も食べないで帰ってくるなんてありえない。


いつも帰りは夜十時ぐらいなのに……
まさか喧嘩でもしたの?


不思議に思いながら、玄関の扉を開けた。


玄関の土間には、見たことのないパンプスが揃えて置いてある。


母でも私のでもない。
見るからに若い女の子のもの。


もしや……
とっさに息を潜める。


突然入って驚かせてはいけない。


すうっと息を吸い込んだ。


「ただいまぁ」


いつもより大きめの声で主張して、私の存在を告げる。




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