紫陽花ロマンス
いつの間にか朱理ちゃんが私の隣にやって来て、光彩の寝顔を覗き込んでる。さらに隣には充まで。
「みいちゃん、可愛いですよね」
ふわりと微笑む朱理ちゃんの目が優しい。
「姉ちゃん、父さんよりも朱理の方がみいちゃんと遊んでたんだからな、父さんはみいちゃん寝かせないで自分が昼寝してたんだから」
充に言われた父は、しまったと言いたげな顔をする。
「やっぱり?」
と言って父を見たら、口をもごもごさせながら。
「あれは、みいちゃんを寝かしつけようとしてて……」
「ミイラ取りがミイラになるっていうんでしょ? お父さんが先に寝ちゃったから、みいちゃんが部屋で泣いてたのよ、かわいそうに」
言いかけた言葉を、台所にいた母の声に遮られてしまった。父はばつが悪そうに立ち上がる。
「眠かったんだ、ん? 晩ご飯できたか? 今日はお母さんの得意なゴボウ寿司か?」
父がくんくんと鼻を動かしながら、台所へと逃げていく。話の矛先を変えようとしているのは明らかだ。