紫陽花ロマンス


「朱理ちゃん、子供の扱いが上手よね」


父を放っておいて、母は弟の彼女に問いかけた。目を細めて柔らかな口調からは、本当に彼女のことを気に入ったことがよくわかる。


恥ずかしそうに頬を染め、朱理ちゃんはふるふると首を振った。


「いいえ、姉の子がみいちゃんと同じくらいなので、よく一緒に遊んでいるんです。姉が仕事の時によく実家に預けにくるので」

「あら、うちと同じじゃない、お姉さんもお仕事はサービス業なの?」

「いいえ、基本的に姉も旦那さんも土日休みなんですけど、たまに出勤することがあるんです。旦那さんも休日出勤することになった時には、実家に預けにくるんです」


二人の会話を聞きながら思った。
女性なのに、お母さんなのに、休日出勤しないといけない仕事なんて大変だなあ……と。


私はまだ楽な方なんだ。


だって平日の休みの日でも光彩を保育所に預けて、私はひとりでのびのびと家の事をしてることもあるし。朱理ちゃんのお姉さんには、そんな暇がないということなんだろう。



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