紫陽花ロマンス


サイアク……


店を出ようとしたら、雨が降っていた。
結構本気の雨だ。駅まで約十分、走ってかわせるような雨じゃない。


まだ傘を買ってないのに、タイミングが悪過ぎる。それとも、これは嘘をついた私への罰か。


どちらにせよ、さすが雨女。
感心せずにはいられない。


まずは母に電話をして、雨が降っているから少し帰りが遅くなると告げた。それから店内に戻る。


とりあえず、ビニール傘でも何でもいいから買って帰ろうと。


以前に店内で探した時には、気に入る色がなくて諦めた。だけど、この際仕方ない。選り好みしてる場合じゃない。


ショッピングモール内の雑貨屋さんをウロウロして、ひたすら物色して巡る。


やっぱり、気に入る傘は見つからない。形はいいけど色が嫌だったり、その逆だったり、これなら……と思っても値段が高かったり。


折り畳み傘なんて消耗品だとわかってるのに、妥協できない自分にイライラしてくる。


彼にも堂々と言ったのに、私って馬鹿だなあ……





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