紫陽花ロマンス


それからショッピングモールの中を散々歩き回って悩んだ末、百円ショップでビニール傘を買った。


傘の柄の部分にだけ、なぜか色がついている。原色の赤、黄、青の三種類ある中で、私は青色を選んだ。


たかが百円の傘、べつに色に拘らない。百円ならためらいなく捨てられるし、どこかに置き忘れても悔いはない。


さあ、急いで帰ろう。
可愛い娘が待っている。


意気揚々と歩き出す。


百円ショップはショッピングモールの三階、一階の出口に向かってエスカレーターを早足で降りていく。


二階から一階へ降りるエスカレーターから一階のフロアへと目を向けると、通路を行き交う人波。


その中に、どこかで見たことのある人の姿を見つけた。


通路の隅に寄る訳でもなく、真ん中で立っているのは傘を壊した大月さんだ。


駆け降りていた足を止めて、買ったばかりの傘を体の後ろに隠した。


だけど、彼の様子は何か変。





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