紫陽花ロマンス


通路に沿って、笹が数本並んで立っている。笹の枝には、色とりどりの短冊が飾られて。


もうすぐ七夕。


実は私の誕生日でもある。
またひとつ、年を取ると思うと切なさしか感じられない。誰が祝ってくれるわけでもないし。


笹の隣には長机が置かれ、小さい子連れの親子と小中学生の女の子たちやカップルが群がっている。


ペンを手に、短冊に願い事を書いているようだ。楽しそうに見せ合ったり、熱心に考えている姿が微笑ましい。


どんな願い事を書いているんだろう。


「保育所でも短冊書いたりするの?」


私を振り返る彼の足は、ごく自然に飾られた笹へと向かっていく。私もついて歩いた。


「私の子供はまだ書けないから、私が書いたんです」

「何て書いたの?」

「友達がたくさんできますようにって、ほとんど親の願い事です」


笹に結びつけられた短冊の中には、明らかに親が書いたと思われるものがある。私が書いたのと全く同じ事が書いてあったから、おかしくて笑いそうになる。




< 83 / 143 >

この作品をシェア

pagetop