紫陽花ロマンス
駅前のロータリーの真ん中に立っている時計を見上げたら、時刻は十七時五十分。
ヤバい、急がないと。
私は延長保育をしていないから、十八時までしか預けることができない。悠長に話している暇などなかった。
「ごめんなさい、迎えに間に合わないので失礼します」
早々に切り上げようと別れを告げた。
顔を上げると、鼻の頭にぽつりと滴が触れた。小さな滴が次々と落ちてくる。
嘘……また雨。
傘を持っていないのに。
結局、買えなかったし。
ああ、もう……
いつものことながら、タイミングが悪すぎる。
でも、おかしくない?
大月さんと出会う時、いつも雨が降ってる気がする。
もしかして、大月さんも雨男?
「僕も一緒に行ってもいい?」
大月さんはバッグから折り畳み傘を取り出して、にこりと微笑んだ。