紫陽花ロマンス
9. 雨を待っている


翌日とさらに次の日、降水確率は30%だったけど長い傘を持って出勤した。見回しても誰も長い傘など持っていないのに。


少し恥ずかしい気持ちもあったけど、そんなの構うものか。


雨に遭いたくなかったからというのもあるけど、何より試してみたかった。


本当に雨が降らないのか。
本当に大月さんに会わないのか。


大月さんに会う時は決まって雨が降る。大月さんに会うから雨が降るのか、雨が降るから大月さんに会うのか。


すると思ったとおり、雨は降らなかったし大月さんにも会わなかった。


さすが雨女と感心したけど、少し複雑だった。


やっぱり、雨が降らないと大月さんに会えないのかもしれない。


会いたい訳じゃない。
ただ、大月さんと雨の関係が気になるだけ。ちょっといい人だから気になるだけ。


大月さんが優しいのは私に対してだけじゃなくて、困っている人誰に対しても同じなのだから。


私が特別だなんて思ってはいけないと思うし、私だって大月さんのことは何とも思っていない。


明日も長い傘を持って行こう。
両親が旅行でいないから、夕立にでも遭ったら堪らない。




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