紫陽花ロマンス


仕事を終えて保育所へ向かう。


保育室を覗いたら、先生を囲んで遊んでいる子供輪の中に光彩の姿がない。少し外れた所で、西条先生の膝の上に抱かれている光彩を見つけた。


西条先生がやって来て、顔を曇らせる。何かあったのかもしれないと身構えた。


「おかえりなさい、光彩ちゃん、日中はいつも通り元気だったんですけど夕方から少しぐずり出して……熱は37度なので様子を見ていたんです」


西条先生が光彩の顔をこちらに向けてくれた。真っ赤な目をとろんとさせて、いかにも眠そうな顔。


「ちょっと調子悪そうですね……すみません」


明日は大丈夫かな……もし熱を出したら、仕事休まなきゃいけない。


私をみとめた光彩が、目を潤ませて手を伸ばす。


「今日も、うちのクラスでお休みしてる子が二人いるんです。もしかしたら光彩ちゃんも……一応気をつけてくださいね」


そういえば、月曜日に先生が溶連菌感染症が流行ってると言ってた。


もし、そうだったら嫌だなあ……と思いながら光彩を抱いて家に帰った。





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