紫陽花ロマンス
家に帰っても光彩は機嫌が悪くて、私の傍から離れようとしない。
というより、抱っこしたままじゃないと許してくれない。下ろそうとしたらぐずり出すから、何にも出来ない。
食欲もなくてぼんやりしているから、早めにお風呂を済ませて布団に入った。
とりあえず早く寝かせようと思うのになかなか寝付いてくれないし、挙句に抱っこをねだり始める。
仕方なく、起き上がって抱っこした。
布団から出て床に座り、ベッドにもたれ掛かる。私の胸に顔を押し付けて、ぎゅうとパジャマにしがみつく。
体が温かいから眠いはず、もうすぐ寝てくれるだろう。
やれやれ、困ったなあ。
明日は仕事を休まないといけないかもしれないと覚悟しながら、光彩の背中をとんとんと叩く。
そのうち私まで眠気に襲われて、瞼を開けていられなくなってくる。
いつしか視界が暗くなったことにも気づかないで、眠ってしまっていた。背中を叩いていた手が、ずるりと落ちる。
はっとして目を開けた。
光彩は?
寝た?