Drive

13-2. 廃棄



長い沈黙が続いた。穴瀬が小学校の高学年になった頃与えられたその部屋で、穴瀬は思春期を迎えて、大学生になって、大人になった。その部屋に積み上げられた本もCDもダンボールに押し込まれた服も穴瀬を作り上げた分身で、そういったものが散乱したその部屋に穴瀬は今石岡といる。真剣だから迷う二人の未来が、二人の口を重くして、空気を重くして、その部屋に沈殿して行った。

階段を上がってくる足音に穴瀬は急いで片づけを再開した。石岡は穴瀬の手元を見つめていた。

野点盆に乗せた菓子とお茶をベッドの上に置いて穴瀬の母親がまた階段を下りていくと、穴瀬はまた手を止めたが、今度は石岡が立ち上がって壁際に置かれたダンボールを持ち上げた。

「棄てるんでしょ?ステって書いてある。」

「うん。」

「外に出してくるね。」

石岡はダンボールを二つ抱えて階段を下りていった。ダンボール、ゴミ袋、棄てるもの、棄てないもの、一つ一つを丁寧に穴瀬に確認する。事務的に。「これはいる?」「これは棄てるの?」「これはどうする?」

俺の事は?

今に、そう言い出すのではないか。穴瀬はそんなことを思いながら石岡が突き出す物を確認する。それはいる、持って行く、置いていく、棄てる、・・・・。

石岡のことは?

持っていけない。置いていく?待たせる?待っててくれる?それとも・・・棄て、る?

石岡のことは・・・

持っていけない訳じゃない。じゃあ、連れて行く?一緒に来いって・・・?そこまで・・・。


「俺の事・・・」

「えっ?」

穴瀬は古いビデオの箱を片付けながらその一本を手にしたままビデオテープの背のシールを見てぼんやりしていた。

「俺の事、考えてくれてるの?」

「あ、ああぁ、うん。」

「本当?」

「うん。」

「・・・ぼんやりしてたから、考え事してるんだなって思った。俺の事だったらいいのに、って思ったの。」

「うん。そうだよ、お前のことを考えてた。」
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