はじまりは政略結婚
「寝れない……」

現在時刻2時。

深夜になっても頭が冴えわたっているのは、智紀が気になって仕方ないから。

こんなに帰りを待ちわびている自分が、やっぱり信じられないけど、どうしても気になってしまった。

ベッドに潜りながら目を閉じてみるも、眠りは訪れてくれなさそうだ。

とその時、玄関のドアが開く音が聞こえて、目を開けると思わず起き上がった。

「どうしよう……。出迎えようかな……」

『寝付けれなかったの』とか言えば、不自然に思われないだろうし。

ドアをそっと開けると、リビングからの電気の明かりが見えて、ソファーに座っている智紀が見えた。

向こうは後ろ姿だから、私には気づいていない。

突然声をかけると驚くだろうから、タイミングを伺おうと壁際に体を預けた時だった。

「ふぅ……」と智紀は深いため息をつき、外したネクタイをテーブルに置く。

普段はとにかく明るくて調子のいい彼のため息が意外過ぎて、声をかけることを途端に迷ってしまった。
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