はじまりは政略結婚
「うん……」

一人だとため息をつく智紀も、私の前だと笑顔を浮かべてばかりだ。

朝ごはんも毎日用意されているばかりだし、夜も帰宅が遅い彼は外食で済ませていて、料理らしいことをしたことがない。

私はここで、何をしているんだろう……。

智紀に、気を遣わせてばかりなんじゃないのかな……。

「私って、ただの居候みたい。料理すらしてないし……」

ポツリと呟いた私に、智紀はクックと笑った。

「ここに来る前は実家暮らしだったのに、そんなに料理してたのかよ?」

「えっ⁉︎ そ、それは……」

言われてみると図星で、今とそう変わらない毎日だったと今さらながらに気付く。

そう思って小さくなる私の額に、智紀は軽くキスをした。

「何を気にしてるんだよ。由香が朝は低血圧なのは分かってるし、変に気を遣わなくていいんだ。じゃあ、お互い仕事頑張ろうな」

ポンポンと頭を叩いた智紀は、小さく笑顔を見せて玄関へ向かった。
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