はじまりは政略結婚
「それなら良かった。由香とメシを食うなんて、ずいぶんなかったもんな」

「うん。そうだよね」

本当その通りで、ここ最近は『一緒に』ご飯を食べる機会はほとんどなかった。

だから久しぶりの兄とのランチに、心はさらに浮かれたのだった。

「せっかくだから、由香の好きな店に行こう。オーガニックの店があったよな? あそこはどうだ?」

さすが、私の好みを把握してくれていて、嬉しさで胸に熱いものが込み上げる。

「うん! そこがいい」

二つ返事で頷くと、兄は優しく微笑んで私の背中を軽く押した。

ーーーー窓が大きくて白色が基調のオーガニックカフェの店は、天井が高い開放感溢れる造りになっている。

そのせいか、店内は明るく洗練された雰囲気で、OLらしき女性グループが圧倒的に多かった。

私たちは窓際のテーブルに座ると、さっそくプレートランチを注文する。

それは、五穀米にオムレツ、それにサラダや野菜ハンバーグなどが盛り付けられていて、どれもがオーガニック素材で作られているのだ。

料理が運ばれてくる間、向かいに座った兄が、おもむろにカバンから何かを取り出した。

それは、メンズのカジュアル派のファッション雑誌で、20代後半から30代前半をターゲットにしたものだ。

「由香、このページを見て」
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