はじまりは政略結婚
戸惑いを隠せず目を泳がせていると、兄はテーブル越しに、私の手を握ってきた。

「海里なりに、後悔してるのかもな。由香に別れを告げたのは、ロスに行くのが理由だったんだろ?」

「表向きはね。でも、海里は私を見下してたから。大事に思ってたのは、私の社長令嬢という肩書きだけ。どんどんモデルとして人気が上がっていくなかで、地味な私とは並ぶのも恥ずかしいって、そう言ってたんだから」

「由香……」

心配そうに見つめる兄から視線をそらすと、一気に三年前を思い出す。

友人の紹介で知り合った海里とは、22歳の時に付き合い始めたのだった。

二歳年上の海里は、当時からモデルをしていたけれどパッとせず、認知度もほとんど無かった。

そんな彼は、最初の内こそ優しく穏やかな人で、特別有名になって欲しいとか、そんな風には思っていなかった。

だけど付き合って一年くらいが経った頃、事務所移籍を機に海里は人気がどんどん上がっていく。

ファッション誌のレギュラーを掴んだりして、一躍有名人になったのだった。

そんな先を突き進む彼との交際を不安に思い始めた時に、今でも忘れられない衝撃発言をされたのだ。
< 113 / 360 >

この作品をシェア

pagetop