はじまりは政略結婚
「納得出来ない……ですか?」

そんなことを言われても、私にどうしろというんだろう。

どんどん小さくなる私を見下ろすように、彼女は威圧的に顔を上げ視線だけを落とす。

身長はほとんど変わらないのに、なぜだか里奈さんを大きく感じてしまった。

「そうよ。愛のない結婚をするなんて、お互い不幸なだけじゃない。私は別れを告げられたことを、今でも納得していないから。智紀は返してもらうわよ」

「えっ⁉︎ ちょっと待ってください。どういうことか、意味が全く分からないんですけど……」

すっかり戸惑う私に、里奈さんは冷ややかな目を向けた。

「まさか、由香さんて自分が智紀に愛されてるとか思ってる? だったら、それは誤解よ。あの人、本当に女の扱いが上手いから」

「え……?」

どう答えたらいいのか困る質問な上、最後の言葉には引っかかってしまう。

確かに今までは、智紀を軽い人だと思っていた。

だけど、二人で過ごす時間の中で、里奈さんが言うようなことは感じなかったのに……。
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