はじまりは政略結婚
「それなのに、智紀のことを分かったように言わないでよ。彼、かなり仕事人間だもん。会社の為なら、あなたにだって優しく接するわよ」

ため息を混じらせた彼女を見ながら、だんだん気圧されていた気持ちも、腹立たしさへと変わっていく。

そして気がつけばそれを、里奈さんへぶつけていた。

「里奈さん、何が言いたいんですか? 智紀を今でも好きなら、彼を悪くなんて言えないと思いますけど」

キツく彼女を睨みつけると、ほんの少しだけ動揺しているのが分かる。

今感じるイライラは、智紀を悪く言われたからだと自覚してる。

そして、なぜそう思うのかも、ちゃんと分かってる……。

「別に悪く言ってるつもりはないわよ。ただ、あなたに勘違いして欲しくないだけ。自分が智紀に愛されて結婚するんじゃないってことは、ちゃんと分かってよね」

フンと鼻を鳴らす彼女は、どこか勝ち誇った顔をしていて、その自信はどこからくるのだろうと少し不安に感じる自分もいた。
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