はじまりは政略結婚
だけどふと、以前に智紀が里奈さんと夜に約束をしていたことを思い出した。
結局、どういう理由で会っていたのかは分からないままだけど、仕事にしては不自然な気もする……。
言葉を失い俯きかける私に、里奈さんは畳み掛けるように言ったのだった。
「その証拠にね、智紀は今でも私と連絡を取り合っていて、いつでも会ってくれるの。彼にとって大事したいのは、あなた自身じゃなくて、『社長令嬢』という肩書きだけ。それを忘れないで」
海里の時には、その肩書きは何の役にも立たなくて、今はそれだけが取り柄なのか、それを考えさせられる彼女の言葉は、私の胸に突き刺さった。
自分の立場と、そしてウジウジする性格が心底嫌になる。
「私、もう戻りますから……」
結局ロクに言い返せず、これ以上ここにいても不愉快な言葉を聞かされるだけだ。
そう思い、半ば逃げるようにドアに手を掛けると、背後から里奈さんの声がした。
「ねえ、知ってる? 涼子さんも、智紀が好きなのよ?」
結局、どういう理由で会っていたのかは分からないままだけど、仕事にしては不自然な気もする……。
言葉を失い俯きかける私に、里奈さんは畳み掛けるように言ったのだった。
「その証拠にね、智紀は今でも私と連絡を取り合っていて、いつでも会ってくれるの。彼にとって大事したいのは、あなた自身じゃなくて、『社長令嬢』という肩書きだけ。それを忘れないで」
海里の時には、その肩書きは何の役にも立たなくて、今はそれだけが取り柄なのか、それを考えさせられる彼女の言葉は、私の胸に突き刺さった。
自分の立場と、そしてウジウジする性格が心底嫌になる。
「私、もう戻りますから……」
結局ロクに言い返せず、これ以上ここにいても不愉快な言葉を聞かされるだけだ。
そう思い、半ば逃げるようにドアに手を掛けると、背後から里奈さんの声がした。
「ねえ、知ってる? 涼子さんも、智紀が好きなのよ?」