はじまりは政略結婚
重い足取りで部屋を出てエレベーターへ向かう途中、今売り出し中の若手女優に声をかけられてしまった。
「嶋谷副社長のご婚約者の方ですよね? 初めまして。私、中園桜(なかぞの さくら)といいます」
「は、初めまして。百瀬由香です……」
確か、先月行われた『金の卵コンテスト』で、グランプリを取った人だ。
20歳の将来有望株として、毎年行われるコンテストで、見事頭にティアラを乗せて貰った人に間違いない。
審査員の一人に智紀がいたことは知っていたけど、あまりに自分に関係無さすぎて、会話にも上らなかったっけ。
私を見つめる綺麗な二重の目は、吸い込まれそうなほど大きくて、白くて透き通る肌には羨ましいほどの艶がある。
とにかく顔が小さく、栗色のロングヘアを緩やかに巻いていて、花の香りがほのかに漂ってきた。
身長は165センチくらいか、少し見上げる感じだ。
私と同じようなベージュのニットにフレアスカートを履いているのに、こんなに垢抜けるのだから、さすがとしかいいようがない。
ぼうっとしながら見とれていると、桜さんがクスッと笑った。
「そんなに私が珍しいですか?」
「あ、いえ。そういうつもりじゃなかったんですけど……」
さっき、里奈さんと殺伐とした会話をした後だからか、桜さんの人懐っこい雰囲気に、気後れしていた。
「嶋谷副社長のご婚約者の方ですよね? 初めまして。私、中園桜(なかぞの さくら)といいます」
「は、初めまして。百瀬由香です……」
確か、先月行われた『金の卵コンテスト』で、グランプリを取った人だ。
20歳の将来有望株として、毎年行われるコンテストで、見事頭にティアラを乗せて貰った人に間違いない。
審査員の一人に智紀がいたことは知っていたけど、あまりに自分に関係無さすぎて、会話にも上らなかったっけ。
私を見つめる綺麗な二重の目は、吸い込まれそうなほど大きくて、白くて透き通る肌には羨ましいほどの艶がある。
とにかく顔が小さく、栗色のロングヘアを緩やかに巻いていて、花の香りがほのかに漂ってきた。
身長は165センチくらいか、少し見上げる感じだ。
私と同じようなベージュのニットにフレアスカートを履いているのに、こんなに垢抜けるのだから、さすがとしかいいようがない。
ぼうっとしながら見とれていると、桜さんがクスッと笑った。
「そんなに私が珍しいですか?」
「あ、いえ。そういうつもりじゃなかったんですけど……」
さっき、里奈さんと殺伐とした会話をした後だからか、桜さんの人懐っこい雰囲気に、気後れしていた。