はじまりは政略結婚
さすがに図々しさを感じていたけど、佐江さんは気にとめる様子はない。

それどころか、私の髪をすくい上げ何やら真剣な表情で考え込んでいる。

「ありがとうございます……。ところで佐江さんは、兄たちと親しいんですか?」

初対面の人との会話は苦手だけど、こんな無茶ぶりを受け入れてもらったのだから、会話くらいこっちから振らないといけない。

そう思い尋ねると、表情を緩めた佐江さんが答えたのだった。

「ええ。私たち三人は親友同士なの。男女を越えた貴重な関係。だから、二人から由香ちゃんの話は聞いてたんだよ」

「私の……ですか?」

「そうよ。祐也にとっては溺愛する妹で、智紀にとっては切ない恋の相手」

「切ない……?」

キョトンとする私に、彼女は茶目っ気たっぷりの笑顔を向けた。

「うん。ずっと聞いてたから。親友の妹を好きだって話。だから、二人の婚約発表を聞いて驚いちゃった。いわゆる政略結婚ってやつなんでしょ? でも、二人が愛し合えてるなら、きっかけは何でもいいわよね」
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