はじまりは政略結婚
プロポーズに次ぐ寝耳に水の発言に、目が点になった私は、その場にボーッと立ち尽くすだけで、意見も反論も出来ない。

すると、父が私の肩をポンと軽く叩いたのだった。

「乱暴な話だと思うだろうが、これも百輪廻出版の社長の娘だと思って諦めてくれないか? 智紀くんは、お前が思うより素敵な青年だ。荷物も今頃届いているだろうから、仲良くするんだぞ?」

そんなことを言われて、「分かりました」と素直に言えるほど、『社長令嬢』教育されていない。

こんなことなら、子供の頃から政略結婚の可能性を教えておいて欲しかった。

「由香、オレも時々連絡するからな」

兄は頭をポンポン優しく叩くけれど、それを嬉しいと思う余裕すらない。

口をへの字にして、わずかな望みをかけて助け舟を期待しながら見上げてみたけれど、私の腕を掴んだのは智紀だった。

「観念しろ。ほら、一緒に帰ろうぜ」

「本気なの……?」

どこかで抵抗してもムダだと思っているのか、私の言葉は弱々しくなる。

そんな私に、智紀は頷きながら答えたのだった。

「ああ、本気だよ」
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