はじまりは政略結婚
いつの間に、こんなに好きになっていたんだろう。

あんなに苦手な人だったのに、少し離れるだけでも寂しいと思ってしまう。

「由香、それならオレもだよ。それに、お前を傷つけたことを心底後悔した。そんなことをしたかったわけじゃないのに……」

ふわりと包み込むように私を抱きしめた智紀の胸の温かさに、どんどん癒されていく。

「違う、悪いのは私よ。本当、子どもじみてたもの。それと……、智紀もヘアスタイル変えたよね? 佐江さんから聞いた」

胸に顔を埋めながら言うと、急に体を離されたのだった。

「由香、もしかして、佐江のところで切ったのか?」

驚きで目を丸くする智紀に、私はキョトンとしながら頷いた。

何をそんなに驚いてるのだろう。

「何か、言われなかったか……?」

また顔を赤くした智紀は、バツ悪そうに見ている。

そんな姿が少し楽しくて、言うつもりはなかったことを口にしていたのだった。

「切ない恋の話。智紀、佐江さんにも私のことを話してくれてたのね」
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