はじまりは政略結婚
涼子の想い
海里からの連絡は、拍子抜けするほど全く無く、最初に会って以来、顔を合わせることもなかった。

あれから半月ほど経ち、今まで感じていた問題なんて、無かったんじゃないかと錯覚してしまいそうになる。

そんな平穏な毎日を送っていた週末の夜、智紀がいつもより楽しそうに帰宅してきた。

「なあ、由香。急なんだけどさ、明日一泊旅行に行かないか? といっても、近くの別荘なんだけど」

「別荘? 智紀の所有の? 私は嬉しいけど、本当に急ね」

だから機嫌がいいのか。

そういえば、ふたりで出かけるのは、サカナケ以来だ。

「いやあ、実は祐也に誘われてさ。涼子と四人で行かないかって。ちょうど空いてるうちの別荘があったから」

「お兄ちゃんから? 珍しい……。それに、智紀もお兄ちゃんが一緒で嫌じゃないんだ?」

いつもなら、話をするだけでしかめっ面をするというのに。

すると、彼は私の額に軽くキスをした。

「あいつに見せつけるには、絶好のチャンスだろ? 由香はオレのものだって、いい加減分からせないとな」
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