はじまりは政略結婚
キスをされた額を、恥ずかしさを隠して撫でながら、智紀に呆れた顔を向けた。

「見せつけなくても、相手は実のお兄ちゃんなのに。だけど、何でまたこんなに急なんだろ」

それに、事情を知っている私としては、涼子さんが一緒というのは複雑だ。

「さあ? それより、なかなかゆっくりできないんだから、思い切り楽しもう」

「う、うん……。そうだね」

智紀が、まるで子どもみたいに楽しそうにするから、余計なことは考えない方がよさそうだ。

とはいえ、あの兄に限って、意味もなく旅行を誘うわけがない。

兄の本心が掴めないけれど、きっと何かがあると考えたら、平穏な日々も今日で最後な気がしてきた。

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ーーー

「よし! 忘れ物はないな?」

トランクに荷物を詰め込むと、智紀は颯爽と運転席に乗り込む。

そして彼に半歩遅れて、私が助手席に乗ったのだった。

「うん、大丈夫。それにしても、本当楽しそうね」
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