はじまりは政略結婚
こっちは、何かあるんじゃないかと考えて、どこか気もそぞろだというのに。

「楽しいよ。また由香と、休みを楽しめるんだ。何? まさか、お前は楽しくない?」

少しムッとした智紀に、慌てて否定した。

「ううん。そうじゃないよ。 ただ、あんまり浮かれてるから」

智紀に不審がられてはマズイ。

きっと、問題を突き止めてくるに違いないからだ。

海里との密会も、智紀と涼子さんの抱き合っている写真の存在も、知られてはいけないのだ。

「ったく、由香は時々素っ気ないんだよな。もう少し、素直に楽しめばいいのに」

ブツブツ言いながら、智紀は車を走らせた。

だけど私から見れば、ここまでテンションを上げている智紀の方が不思議だ。

普段、仕事で忙しい分、休暇がかなり嬉しいのか……。

今日向かう場所は、智紀所有のブライベートビーチにあるログハウスらしい。

そこなら、遠慮なく過ごせるからだとか。

「智紀所有のプライベートビーチとか、凄いわね。お兄ちゃんでも、自分所有の別荘はないわよ? 父のならあるけど」
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