はじまりは政略結婚

そう言った海里は、おもむろにネックレスを外した。

それは、あのペアリングが付いているものだ。

「覚えてるだろ？ オレたちのペアリング。由香を手離したことを、心底後悔していた。それなのに、お前は何事もなかったように、嶋谷と結婚するんだもんな。信じられないよ」

何を、勝手なことばかりペラペラと言っているのだろう。

こんな人を好きだったこと、そしていつまでも言われたことを引きずっていた自分をバカバカしく感じる。

「何事のなかったように？ ふざけないでよ。私は、海里に言われたことをずっと気にしてた。地味だって言われたこと、社長令嬢と付き合っても得することはなかったって言われたこと、ずっと気にしてたのよ？」

感情的にまくしたて、息を切らす私を海里はキョトンと見ている。

「そんなこと言ったっけ？ 全然覚えてないけどな。あ、まさかそれが原因で、オレの別れ話を、すんなり受け入れた？」