はじまりは政略結婚
「それも、単に談笑してる雰囲気じゃないし。それに……、百瀬さんが一度エキストラで、撮影に参加されたことがあったじゃないですか? あの時の海里の様子が、変だとは思ってたんですよね」

言われてみればあの日、桜さんから海里に深入りするなみたいなことを言われた気がする。

様子がおかしいとは思っていたけど、あの時から怪しんでいたなんて驚きだ。

「だけど桜さん、どうしてそう思ったんですか?」

「だって、妙に副社長に挑発的だったから。それに、副社長も海里を見る目が怖かったので……」

それだけで、そこまで勘が働く桜さんがスゴイ。

たしかに、あの時の海里は私と顔見知りだと堂々と言ってたし、ペアリングのネックレスも目立たせていた。

「スゴイのね、桜さんて。そこまで気がつくなんて、感心するわ」

だけど、ここで海里との関係を話していいのか迷ってしまう。

何ひとつ問題が解決していないなかで、事態を複雑にするべきでない。

そう考えて、やっぱり口はつむぐことにした。

「言ったじゃないですか。私にとっては、百瀬さんはお姫様みたいな人なんです。副社長とのご婚約も、とても嬉しかったのに。だから今回のことや、里奈さんと海里の怪しい行動が気になって仕方ないんですよ」
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