はじまりは政略結婚
兄の部屋へ移動した家具類は、その日中には智紀のマンションへ戻ってきて、その速さにかなり驚いた。

でも、思い返してみれば、智紀の突然のプロボーズの日も、荷物がすでに運び込まれていたっけ。

彼には、私の知らないネットワークがたくさんありそうだ。

それも少しずつ、知っていけたらいいな……。

「由香と、一緒に過ごす夜は、本当に久しぶりだな」

ようやく戻ってこれた智紀のマンション。

兄は心底嬉しそうに見送ってくれ、近いうちにきちんと話をしようと言ってくれた。

「うん。本当に嬉しい……。だけど、智紀は大丈夫?」

ベッドに座った私は、隣に腰を下ろした智紀に顔を向けた。

「大丈夫って? 」

「だって、里奈さんのこと……。ショックだったでしょ?」

そう聞くと、智紀は小さく頷き、少しずつ話し始めた。
< 299 / 360 >

この作品をシェア

pagetop